売れる営業パーソンはTELアポをとろうと思わない

壁を乗り越えた営業パーソン

「アドバイスのおかげでアポが取れました」

と嬉しそうに私のところに報告に来たのは、なかなかアポが取れずに苦しんでいたS君です。

S君こそしっかり事前の下調べもして、問題や課題も挙げ、顧客とのやりとりも自然にできています。

どうしてアポが取れないのかは、彼の下調べの問題ではありませんでした。

「売り込んでいるからアポが取れないんだよ。真剣に顧客のことを考えているか?」

直属の上司からは再三注意され、S君自身も心掛けてやっているように見えます。実際S君は真剣に顧客のことを考えているつもりのようだし、とくに売り込んで嫌がられている感じも見られないのですが、「顧客のことを考える」ということは想像以上に大変で、厳しいことだと思います。生半可な気持ちでは本当に「顧客について考えている」ことは伝わらずに見透かされてしまうのです。

悩んでいる彼に対して、以前から気になっていたことを伝えました。

「顧客に気に入られようとしているんじゃないか?そんな営業パーソン、俺だったら会いたくないな」

電話口でも比較的、自然に会話がはずんでいるように見えるS君。しかし、私には何かが足りないと感じていました。それは、一歩踏み出して自分の意見を率直に顧客に伝えることです。アポを取りたいという思うので顧客に嫌われたくないという心理から率直な意見が言えないと顧客は媚を売っているように感じたりするものです。

S君は電話口の顧客の社長に向かって、「自分はこう考えます」「社長は、そうおっしゃるかもしれませんが、私はこう思うのですが」というように、自分を主張することができていない。そう感じたのです。

本気で顧客のことを考えれば、意見がぶつかりあうこともある。それを避けていては、顧客も本気で向き合ってはくれません。

「”顧客のことを考える”という点を勘違いしていました。ときには自分の意見をぶつけて、対立することも必要なんですね」

S君は私の言葉をしっかりと捉えてくれたようです。聞けばアドバイスを聞いた後のアポで、こんな社長に当たったそうです。

「経営目標を達成するには現在の取引だけでは不足だが、新規開発をやるノウハウもリソースもない。ただ安定的に利益は出ているので、とりあえず今のままでいいよ」

それまでのS君なら、「では、必要になったときによろしくお願いします」「何かあったらご連絡ください」などと引き下がっていたでしょう。

ところが、そのときは違いました。正直に自分の意見をぶつけたのです。

「社長、課題が明確にあるのですから、むしろ今、安定的に利益が出ているうちに、今後のために対策を取るべきだと思うのですが?」

「私には私の考えがあるのでね」

若い営業パーソンの意外な返しに、社長も少しイラっと来たようでした。

たとえこのように多少イラっとしても、こちらが「顧客のことを考える」という軸さえブレていなければ、その誠実な気持ちは必ず顧客に伝わります。これは私のこれまでの経験から、間違いのない事実。その軸さえ動かなければ恐れず顧客にぶつかっていけばいい。

「一度そのお考えをうかがわせていただけませんか?」

結局、S君とやり取りした社長も、その気持ちを感じたのでしょう。「じゃあ、一回来なさい」とアポが決まったといいます。

それまで対立を避けてTELアポをしていたS君ですが、この体験で見事に変身しました。まさに「一皮むけた」という感じ。今ではこちらが少しハラハラするくらい、自分の意見をぶつけています。アポの数も、成約数も一気に増えました。

真剣に「顧客のことを考える」ということは、腹を括る、覚悟を決めるということでもあります。顧客に気に入られよう、何とかしようという心の甘さとの戦いでもあるといっていいでしょう。

さて、アポ取りの準備とトーク内容についてお話してきました。

アポ取りを成功させる秘訣は何と言っても準備にあります。

ここさえしっかり固めておけば、どのような顧客でも、自信をもって堂々と臨むことができます。ぜひ一つひとつ試していき、ご自身の成功事例を増やしていってください。

是永英治

代表取締役

創業以来22年間、約600社の営業代行プロジェクトの指揮を執り様々な山を越えてきた営業代行のパイオニア。